関係最悪の年上部下が、頼もしい右腕に劇的変化したワケ/介護福祉の人財成長のリアル
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業種
介護福祉施設
- 種別 レポート
入社6年目で特養のユニットリーダーに抜擢された私。自信を持って、張り切ってチームマネジメントに取り組んだ。しかし待っていたのは、厳しい現実。若手リーダーの言葉になど、誰も耳を傾けてくれない。
チームは荒れ、職員の不満は溜まり、ついには離職者が出るまでに。様々な取り組みにチャレンジをするも、事態は悪化するばかりだった。
しかし、ある講座を受講したことで状況が一変する。チームの関係性は劇的に改善していくのだった…
ベテラン職員が一斉退職、若手の私がリーダー?
私の勤める特別養護老人ホーム(特養)は、生涯入所・短期利用合わせて100床ほど。職員数も80名を超え、ここ数年は、特に若手育成を意識した人事方針が掲げられていた。
実は今から7年前に施設がユニットケアに転換し、リニューアルのタイミングで職員の大幅増員が行われた。そのとき3名の大卒・専門卒が採用され、私はその1人だったのだ。
平均年齢52歳の職場である。私たち若手職員に対する期待が、ひしひしと感じられた。施設長からもことあるごとに目をかけてもらい、将来は施設を支える一員になるのだと、私たちは期待に胸を膨らませていた。
数年が経過し、ベテラン職員が次々と定年退職の時期を迎えた。ユニットリーダーの一人も退職となり、その後任として、私に白羽の矢が立った。当時入社6年目であった。
私は張り切って、マネジメントに取り組んだ。
そして1年後…私はリーダーとしての自信を大きく失い、リーダーを辞するか否かの瀬戸際まで追い込まれてしまった。
ベテラン職員から、手痛い反発
私がリーダーになってから1年、メンバーの関係性もチームの成果も明らかに悪化していった。いまやどん底状態である。
利用者や家族からのクレームは増え、入院者も多くなった。収益は悪化し、他部署の足を引っ張っている。結果が出ない中で、職員からは不満の声ばかりが挙がり、離職者まで出してしまったのだ。
なぜこのような事態になったのか。
理由は明らかだった。私以外のメンバーは、全員年上でキャリアも長い。若手の私がリーダーに抜擢されても、誰も私の言葉に耳を傾けてくれないのだ。
実は最初から、その予兆はあった。
新リーダー着任早々、私は当然の思いとして「介護サービスの質にこだわったチーム運営を行っていきたい」と考え、メンバーの前でそう宣言した。すると、即座に田中さん(仮名)から、「それはおかしい。安全最優先の介護をすべきだ」と反発されたのだ。
田中さんは、メンバーの中で最長の20年の介護キャリアを持つベテラン職員である。はっきりとモノを言うタイプで、他の職員に対する影響力も大きい。
その田中さんから、初日から手痛い反発を受けてしまったのだ。
その日以来、私が何か指示をしても、まずは田中さんにお伺いを立てるという、いびつなチーム運営になってしまった。キャリアが長く主張の強い田中さんの意向を、メンバーも無視するわけにはいかなかったのだ。
私にとって、田中さんはチーム運営の阻害要因になっていた。確執は明らかで、メンバーのモチベーションは下がり続け、いよいよ数少ないメンバーから離職者が出てしまったのだ。
キャリアを前に、やればやるほど空回り
この1年、本当に針の筵に座る思いだった。
キャリア不足を補うには、勉強するしかない。たくさんの本を読んで皆に新しい取り組みを提案した。現場のシフトに入るようにし、同じ目線に立てるよう意識もした。
しかし、まったく効果はなかった。やればやるほど空回りしているようにしか感じられず、溝はますます深まっていった。
もう、限界かも知れない。
リーダー就任1年が経過し、私はひとつの結論を出さなければならないと覚悟を決めた、その時だった。
「向いていないと思っているリーダーのための講座」
この案内が目に飛び込んできたのだった。
職員指導に悩む介護事業所のリーダーに贈る、
向いてない、と思っているリーダーのための
面談メソッド習得講座
何ということだ。まさに私ではないか。私はそもそも、リーダーに向いていなかったのだ。そんな私が、ベテラン勢を前にして、何ができるというのか。
居ても立ってもおられず、施設長室に駆け込んだ。 施設長の承諾を得て、藁にもすがる思いで、面接メソッド習得講座に参加したのだった。
リーダーシップを勘違いしていた
講座に参加し、半年が経過した。
結論から言うと、どん底にあった私たちのフロアは、かつての状況が嘘のように理想的な運営に様変わりしている。
たった3日間の講座だったが、そこで学んだことは、目からうろこのことばかりだった。リーダーシップの意味を、私は全く勘違いしていたのだ。
メンバーの意識はがらりと変わり、利用者優先のサービスを目指す強固なチームになっていた。何より、私自身の視座が全く変わった。
半年前の私は、自分がどうやってチームを引っ張っていくかということばかり考えていた。
いまの私は違う。職員の意欲を引き出し、伸ばし、力を発揮してもらえるように状況・環境を整えることが、私の役割なのだ。
それを実現する方法はたった一つ。「面談をすること」だった。
かつてあれほど苦しめられた田中さんですら、いまや頼もしい右腕となっている。
講座で出会った森田講師が、口酸っぱく言っていた。「面談だけで、組織は変えられる」
まさにそのことを体現したような現場が、目の前にあった。
第1講 部下との心理的距離を縮める定期面談の方法
第2講 尊厳を大切にしたコミュニケーション技法
第3講 垣根が低くなるリーダーとしての振舞い方
この3つのステップを通じて、とにかく具体的な面談の実施方法を学んだ。
特異な技術は必要ない。正しいやり方に沿って進めさえすれば、面談を繰り返す中で、メンバーは自ら変化し、仕事に対する意欲が高まっていく。このことを実体験した。
私がメンバーを変えたのではない。メンバーが自らが気づき、変化していったのである。
自ら考え、動こうとする組織
面談に力を入れるようになってから、私は自分の理想や方針を殊更に語ることはなくなった。私が口うるさく言わなくても、意図が伝わっているという手応えがあった。メンバーが自ら動き、自ずと皆が同じ方向に向かうようになった。
組織を動かすということ、人を動かすということはこういうことなのだと、ようやく理解できた。
例えて言うなら、風に向かって帆を張り、私はほんの少し舵を切るだけでいいのだ。それでチームは目的地に向かって進んでいける。
自ら考え、生き生きと躍動するメンバーの姿を目の前にして、私はこのチームなら、真の介護サービスを一緒に実現していけると、確信している。
面談メソッドの習得で、チームは驚くほど変化する
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